忍者ブログ
[160] [159] [158] [157] [156] [155] [154] [153] [152] [151] [150
Posted by - 2017.10.20,Fri
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Posted by LittKidd - 2008.11.21,Fri
『火星のタイムスリップ』を読み終える。ひと目見てSFとわかる、良いタイトル。え、火星でタイムスリップ?一見、そんな素朴な感じでいかにもオールドスクールな印象を持たれてしまいそうなタイトルでもあるが、内容はやはりディックらしく、実に誠実に力強く(結果的に)グロテスクだった。

ディックの長編の中でも、「破綻の少ない」「構成の優れた」作品として有名なのだそうで。確かにテーマも明確だし、ことに関わる人物たちの動きのバランスが良く、ある種の(一般的な文芸作品としての)群像劇としても読めそうなくらい「ちゃんとした」感じのする小説。そこには死や実存の不確かさ、社会との関わりの上での不安、といったような大きな意味での「恐怖」があり、登場人物のそれぞれが、そこから逃げよう、なんとか「安心」を手に入れよう、ともがきあえぐ姿が、火星の荒野と、そこにへばりつくように築かれた人間の棲む都市を舞台に描かれている。

SF的には、慢性的な水不足、地球から密輸された禁制品、といったいわゆるディック的なディストピア描写や、主人公ジャック・ボーレンや自閉症児マンフレッドの恐るべき内的世界、その描写が際だって印象深い。特にマンフレッド少年がその分裂病質ゆえに持つ特殊能力、すなわち「世界と隔絶している」ことが「世界と切り離された時間軸を持つ」ことであり、つまり「時間というものを改変することができる」というガジェットというかアイデアは、ディック作品では姿を変えて繰り返し描かれるものだが、その描かれ方、その悪夢的なイメージの表現が、なんていうか、もう本当にゾクゾクするくらいに素晴らしい。マンフレッドの眼を通して、何度か繰り返される作中のある一場面。そこでは人はみな死ぬか腐っていて、だがそのことに気づかず醜い自我や強烈な欲望を生まれるがままにさらけ出しているので、マンフレッドは見たくはなくともそれを見ざるを得ない。そこには理解とか共感といったものは一切なく、ただひたすらに邪でおぞましいモノや現象が連綿と続いてゆく時空間なのだ。文章上、そうした彼の内的世界の表現がそのまま地の文とひとつながりとなっているため、読んでいる我々には、正確にはどこまでがマンフレッドの世界でどこからが正常な世界なのか、段々わからなくなってくる。小説内でも、彼の世界は他の登場人物たちを引き寄せ、巻き込んで人々の世界を浸食してゆく。ああ、絶対嫌だこんなガビッシュな世界。ガブルガブル怖い。

ラストは、他の作品に較べるとやや救いがある感じ。個人的にはもっとぐっちゃぐちゃになって終わってほしかった(『ユービック』みたいに)気もしたが、マンフレッドのためにはあの方が良かった。てかそういうのを補って余りあるくらいにちゃんと面白かったので満足。ただ、現行で出ているハヤカワの文庫版で読んだのだが、解説がちょっとひどかった。
川又千秋、この人がSF界でどんだけ偉いのかは知らないが(調べる気もしないが)、「重要だ」「傑作だ」「自分のベストかも知れない」と言いつつ、ほとんど内容にも触れなければ、ディックに関する新しい情報や優れた考察があるわけでもなく、やたらと改行の多い文章でひたすら自分の他愛もない話に終始する、というとても奇妙な文章で…普段温厚な草食動物のわたくしも、思わず天を仰いで「僕僕うるせえよこのチンカス…」とうめいてしまうような意味不明の代物でした。なんなの?馬鹿にしてんの?100パーだめだろ、こんないい加減な文章よう…別にその作家に愛情がなくてもいいから、それ以前にまともな文章書ける人に書いて欲しい。

といったようなことでせっかく本編が面白かったのに読後感はわりと最悪でした。あまり本読んで腹を立てたことないのだけど。あっひょっとしてこういうこと?「分裂気質」の「自閉症を患った人」が書くであろう解説は、まともに読まれることを拒絶するようなつまりはこういうものなのです、っていう「内容に触れずテーマだけをえぐり出す」式のそういう深〜い、実は作品の精髄に即したハイレベルな解説をってんなワケあるかボケェ。本屋で見たら手前の本は棚の奥深くにねじ込むか、返品作業用の棚の上にヒモでくくって置いてやっから覚えてろ、と思った(実際にはしません)。シェイム・オン・ユウ!
PR
Comments
Post a Comment
Name :
Title :
E-mail :
URL :
Comments :
Pass :   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TrackBack URL
TrackBacks
counter
comments
[11/13 NEX-5N]
[12/13 watanavader]
[11/25 Watanavader]
[10/30 litt]
[10/30 watanavader]
searching in wissenschaft
profile
HN:
LittKidd
性別:
男性
 
Template by mavericyard*
Powered by "Samurai Factory"
忍者ブログ [PR]