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Posted by - 2017.06.23,Fri
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Posted by LittKidd - 2008.08.31,Sun
『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一



新書なんて久しぶりに読んだ。作者の専攻は分子生物学、とあるように、その辺りの学問分野のお話を硬軟とりまぜて(ほんとに『硬い』ことはちゃんと省いて)紹介した好著。根っからの文系な俺でもついて行けたのにビックリです。出版自体はもう一年くらい前らしいんだけど。

オビで茂木健一郎もホメているように、作者は本当に文章がうまい。多くの美しい自然描写や、分子レベルの大きさの世界で何が起こっているか、を比喩で語る場面が出てくるが、その描写がいちいち素晴らしいのだ。イメージ豊かで、説明に過不足がなく、時にリリカル。月刊誌に連載されたものをまとめたものなので、章立ての中でコンパクトにエピソードがまとまっている構成もとても読みやすい。

タイトルのように、生物と無生物の境界線、生命の定義って何なのか、ということをテーマに、様々な科学者たち(多くは生物学者だが、物理学者も)の思考と実験と研究の足跡を辿る形で本書は進んで行く。研究が実らないことの苦悩、自説への懐疑、ライバル研究者との競争、その過程で行われる、けして珍しくはないデータの盗み見や改竄、成功者への妬み・そねみや足の引っ張り合い…といった暗い一面も描かれれば、次の者へとバトンを渡す、その蓄積によってのみ、科学という学問全体が大きな歴史の流れの中に紡がれてゆく、ということのダイナミズムをも描写しています。

そうした巨視的な世界の見方をする一方で、遺伝子の驚くべき性質や、細胞膜とタンパク質とのよくできたメカニズムなど、極小な世界の精緻な成り立ちで我々の世界が支えられている、ということを改めて実感させられる。そんな〈マクロ←→ミクロ〉の振り幅と、時代が進むにつれ明らかになる(ように見える)『生命の秘密』がとても魅力的。そういう意味では科学ミステリーと言えるのかも知れないが、この『生命』という『事件』が解決するのは、おそらくまだまだ先のことに違いない。そこにわかりやすい『犯人』はいないし、それを探し当てる『探偵』は、けしてただ一人のヒーローではないはずだ。そうした結末ではなく、今ここで進行している、自分(と世界)という現象こそが、本当にスリリングで、ありえないくらいの面白いものなのだ。てな思いを抱かせられました。

「死んだ鳥症候群」の話など、我が身に照らして考えさせられるエピソードも多い。エピローグで描かれる作者の少年時代、その生物学者への第一歩などは「美しい」のひと言。文学だけやってる人には、きっと描けない種類の真実味があります。
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