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Posted by - 2017.09.24,Sun
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Posted by LittKidd - 2008.10.07,Tue
友人に勧められて『トウキョウソナタ』を観てきた。有楽町シネカノン。有楽町線から地下で直結(1〜6Fはビックカメラ、7・8Fが映画館)していてアクセスが容易。いつも行ってる池袋の劇場とは違って、すごくシックというか、上品だ。キレイだし、客層も違う(そりゃそうだ)。上映のことをよくわかってなくて言ってますが、池袋の劇場で、予告編の後、本編が始まるときにスクリーンのピントを合わせ直すのを見たことがない。もうそういう(デジタル上映とかそういった)システムなのかな、と思ってたらシネカノンではやってた。ロールチェンジの時もやってたから、そうだろう。先日の『ウォンテッド』ではあんまりピンがボケてるので、本編が始まって間もなく係の人に言いに行った。自信はないがたぶん改善されてたと思う。

感想としては、面白かった。ここまで「物語」に入り込んだ映画は久しぶり。それが一番良い観方だとは思えないながら、家族それぞれの抱えた、それぞれの悩みに共感しながら観てしまった。ただ、このそれぞれの悩みは本当にそれぞれ個人的で、それが「家族の悩み」には決してならない、というところが非常に現代的だと思った。思って観ていたのだが、ラストを観て、あーこの家族はこれから「家族の悩み」を抱えてくことになるのかしら、と思い直すことになった。さらっとだけ後述します。

まずは冒頭、開け放したサッシから雨が降り込む、あのシーンが良かった。急いで床を拭き、サッシを閉めかけ、空を見上げるお母さん。鈍い光、不吉な強い風が吹いている。この家に対する脅威を、たしかにこれから守ろうとするのがお母さんだ。その暗示、暗い雰囲気に、映画にスッと馴染んでいくことが出来る。

観ている間、僕はあの家族のお父さんになり、お母さんになり、たかし(長男)になりけんじ(次男)になっていた。特にお父さんのパート(楽章、と言っても。『ソナタ』は複数楽章から成る、らしいので)は、他人事でなくて困った。戯画化されてはいるが、あのハローワークに並ぶときの気持ち、あれを思い出させてくれただけで、いやいい映画観たなあ、と思える感じだ。あのね、もう本当に不安なんですよ。色んな人がいて、自分より遙かに身なりの良い人、てきぱきしてなんでも出来そうな人が、しかし疲れた顔して相談員と話したり、浮かない表情でモニタを見つめたりしているのって。だから前半しつこく職安が出てくるの、けっこう楽しかったです。炊き出しに並んだまでの経験はないし、何より今、俺は職安に行かなくても明日を過ごせる身だ、と思えたので。ヤバい人を見て、そうじゃない自分に胸をなで下ろす。まあそう思えるくらい、香川照之の困り顔がリアルだったという評価でもある。津田寛治とのやりとりは、運動神経のいいもん同士のハイレベルな芝居合戦、というにおいがちょっとだけして若干いやらしい。でもあのお呼ばれしての食事のシーンは良かったなあ。娘が不気味で、幽霊みたい。あの家族はだから失敗例というか、ソナタを奏で続けられなかった、サバイヴできなかったものの象徴なんだろう。それはけっこうリアルだと思う。実際、職がなかったらどうやって食べてくの?という問いは、できれば直面したくない感じにとてもリアルだ。結局、失業中に息子が「ピアノ」とか言い出したら「とんでもない」って自分も思うだろう。

他は、これも自信ないのだけど長男たかしパートの、アメリカの軍隊に日本人が制度的に(国内募集を行った上で、まとめて)入隊する、というやつ。あんなシステム実際にはないよね?! いやあったらごめんだけど、ないんだとしたら、それを思いついた事がすげえなと思って。逆(?)海外青年協力隊。まあでも現代の日本を舞台に、SFでなしに戦争を持ち込もうと思ったら、米軍を持ってくるしかないのかも。自衛隊派兵のことなどを考えると、作品の設定でそうなったのも必然的な流れかもしれない。ただ、米軍に入りたい、というたかしの心境は理解できず。映画がその辺を描いてないからか、単に自分にそういう考え方ができない(歳やそもそもの偏屈さで)だけなのかが自分的には微妙。

次男けんじのパート、心が苦しい。もう思い出すだけで泣きそう。あの子ども、顔がいい。ほんのり香川に似てるし。所在なげな感じが野生動物の子どものようだ。あと井川遥がめっさキレイ。

お母さんのパート、キョンキョンの抑えた演技が、割とというかなり良かった。映画で観るのはたぶん『怪盗ルビィ』以来なのだが、いい「おばさん」になったなあと思う。あんなきれいなおばさんは現実にはほとんどいないのだが、映画で観ると「おばさんであること」にちゃんと違和感がない。それが女優というものの能力なんだろう。それが前半。で後半で思ったのですが、役所広司、必要か?別に嫌いな役者ではないのだが、キョンキョンがお母さんである自分を見つめ直すために、あの強盗が必要だったかを考えると、ちょっと疑問に思えてしまう。ひとつには、「役所のためのシナリオ」に見えてしょうがない、ということ。もうひとつは、シナリオ上、ちょっと分かり易すぎる「装置」なのじゃないかという不信が拭えないこと。絶対わざとだとは思うが、演技が過剰。つられてキョンキョンも舞台調に。「俺には何にも見えない!」と海の彼方に絶叫するに至り、セリフも含めたなんつーか演劇っぽいあの空気が自分の中ではけっこう気まずかったです。劇的が悪い、という事じゃない。劇的であることが、流れ上あそこで必要だ、ということはわかるのです。ただその劇的への、持って行き方が強引じゃないだろうか。シナリオの上での、「うわべの」クライマックスであるあの場面で、夫と妻が、カットバックで「やり直したい」「どうしたら」「やり直せたら、どんなにいいだろう」と同じ思いを口にするじゃないですか。単にあそこを違和感なく用意するための地ならしとして、のだけのために役所広司の過剰さがあったのだとしたら、それは何というか、ちょっとズルくねえかと。

なぜなら夫と妻の「やり直したい」というセリフに、いかにリアリティを込めるか、というところがこのシナリオの肝(のひとつ)になってくるはずだから。単に役者がセリフを言って、そのムードと力強さで納得させちゃう、という手法はこの映画にはふさわしくないように思える。『トウキョウソナタ』のキョンキョン演じるお母さんがなぜそこまで、「目が覚めたらまったく人生だったら、どんなに素敵かしら」とまで絶望しているか、その思いがどこまで深いのか、は今のところちょっと伝わらないのだ。その感情の表出が唐突だし、役所の出す空気が濃すぎて邪魔している。

適当な例かがわからないが(またよくある話なのかもしれないが)、30年以上連れ添ったある一組の夫婦が、かなり真剣な別れ話になった時、その場に居合わせたことがある。妻の方が言うには、ずっと、宝くじを買うのを楽しみにしていたと。当たらないかもしれないけど、買わなきゃ当たらないし、買い続けて当たりが出たら、そのお金でやっと、あなたと別れられる。そう思って私は宝くじを買い続けていました、と。その重さ。ずしーんと来ない?僕はこの話にずしーんと来るのだが、キョンキョンと香川の表明する「やり直せたら」にはここまでの重さとリアリティはない。

まあでもそうした種類のリアリティは必要ではなかったのかもしれない。浪花節のようになってしまってもつまらないし。ただ彼と彼女のそうした実存的な苦しみに、もう少しいくらかの具体性があれば、あの、エピローグに見せかけて「本当の意味での」クライマックスだった、けんじのピアノのシーンがより輝いたのではないかと思ってしまった。そう、あそこ!別に盛り上がるところではないのだろうが、本当に美しい。陽の光が床を照らす、あの空間に、音楽が満ちてゆく。はっきり言ってしまえば、あそこでは「希望」というものがまさに生まれていて、そのことにあの場の全員が深く納得しているのだ。そこに、この映画ではじめての「祝祭」が描かれている。

この家族が、これから「家族の悩み」を抱えてくことになる、と思ったのはここを見て。以下は、たぶんこの映画自体とは全く関係のない僕の妄想です。いとこ3人が音楽学校に通っていたのを傍目で見ていたからわかるのだが、単純な話、音楽の勉強はちょっとはんぱなくお金がかかる。クラシックの素養を持つのが良家の子女であることが多いのは、別にその家の趣味がそうだから、というだけの話ではない。その額はお父さんが派遣の掃除員程度でまかなえるものじゃないし、お母さんもパートに出なくてはいけなくなるだろう。場合によっては家を手放すこともあるだろう。生きて帰ってきた兄ちゃんは、弟中心の家族の姿に面食らうだろう。まあつまりは金だ。そういう形而下的なものに悩まされ、でも家族で支え合おう、というかっこ悪いものなのだ。家族というものは。そこに向かっていくと、ドラマは美しくはなくなる。だから映画はその前の、(そういう、以降のかっこ悪い日常を含む)希望の生まれた瞬間を提示して終わる。

タイトルにした「満たせる水の量」は、この映画に「入る」水の量が多い、ということが言いたかった。うまく言えなかったが、ようはフィクションとしての容量が大きい、そして強度が高い、そういう作品ほど、こちらの心に浮かんだ思いや感情をたくさんすくってくれる、ということが言いたかったのです。
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