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Posted by LittKidd - 2008.09.17,Wed
◎『あたらしい朝(1)』/黒田硫黄

会社帰りにジュンク堂でゲト。アフタヌーンに連載中の大王最新刊。連載読んでなかったしこの人のマンガに触れるの自体久しぶりでもあったので、なんか個人的には「ま読んどくかいちお」的な軽い感じでペラペラやり始めたのだった…が!! 傑作の予感、というか最終刊まで待たずとも分かる、大傑作でしょうこれは。大海原、第二次世界大戦、「勝って勝って勝ちまくっ」ているドイツの描写、タンカー級の船の数々を蹴散らす、第二話扉のヴァイキングに扮した主人公マックス(連載時に正月だったらしく、六話目では出初め式までやってる)の姿などから、荒唐無稽な冒険活劇やるぜ!という意気が伝わります。

『無害な貨物船のふりをして、近づくと突然、正体を現すおそろしい囮船……!』仮装巡洋船トールに乗ったマックスの、男だらけで汗臭くてムサい日常は、ときに反転して派手な戦闘も起こりうる命がけな戦争デイズ。もとはバナナの運搬船が、英国の『メカニックのかたまりの本物の軍艦』とじっと対峙するときの緊張感。そのときの乗員それぞれの頭の中身とか、数人がかりで装填する大砲の弾丸の重さ、といったことを細かく想像して「たとえばこんなことあったんじゃない?」と提示してみせたリアリティと、腹も減れば妄想もする、モテるモテないでケンカする、そんな男たちののん気な他愛もなさ、そのだらりとした生活のたたずまいとのミックス加減がすばらしい。電車で小一時間付き合っただけの乗員達に、男の友情すら感じてしまいそうだ。ただ、この作品はそこで終わるマンガではない。二巻以降どういう展開になるかわからないが、ガチン、という音を立ててでっかい運命の歯車が動き始めたことは間違いない。

そもそも、黒田の「筆で描いた」マンガがあまり好きじゃなかった。けして達者な筆遣いではないし、黒すぎて細部が潰れた人の顔などを見るにつけ、かーもうペンで描いてくれりゃあいいのに!と思うことしきりであった。筆が効果的な場面ももちろんあるのだが、全体の解像度、という意味ではやはりペンの方がニュアンスが出せる作家だと思っていた。今作は、オール(続きものだから当然だが)筆。巻も半分くらいまではもやもやした気持ちで読み進めて行ったのだが、五話のジャワに寄港するあたりで、ふと気づいた。これはモノクロ映画なんじゃないか。スクリーントーンだって使ってはいるが、必要最低限。筆の線の太さが、余白との対比を、より際だって見えやすくしている…つまり色でなく、単色のコントラストですべてを描写しているのではないかと。まあ、単色刷りのマンガは原理的にそう(単色のコントラストで表現されているということ)ならざるをえないのだけど、そしてそれが「モノクロ映画」をイメージしたものかどうかはわからないけど(カラーのページもあるしね)、その事をあえて強調する意図があるのは間違いない、と見ていい。
黒田硫黄というマンガ家は、オフセット印刷の際の、各色の網点の角度まで印刷所に指定してくる男である。デザイナーでもADでも、そんな奴は(たぶん)あまりいない。コマの大きさ、枠線の太さ、といった基本的なマンガ技法を根本から見直す、そうした努力を自覚的に行う研究家でもある。その事実を思い出したと同時に、なるほどなあ、と自分の中で腑に落ちるものがあった。

そしてその後に訪れた、あの場面。引退した元ドイツ兵の商店主が、兵用の堅パンを口にして、「ばだっ」っとテーブルに片腕を落とし、ただただ涙ながらにパンを咀嚼する、その口元にズームアップするあの2コマ…!これは筆だ!(黒田硫黄が描くとしたらやっぱり、)筆でしかあり得ないショット!このコマはちょっと、ものすごい。大げさかも知れないが、マンガというメディアのある種の到達点とさえ感じた。続く数ページの有様を見て、これは確かに筆でしかあり得なかった…と再び頭を深く垂れることになりましたとさ。なんか黒田にうまいことやられた感じだ。たとえば止まった絵だけで言えば、五十嵐大介の方が明らかに絵はうまい。ただ動き(と、音)のついた「マンガ」となると、黒田の表現力(ほとんど老獪さ、といってもいい)に敵う作家は、自分の知るところではまだいない。まあそれほどマンガ読んでないからだけど。

読み終わると、けっこう疲れた。ストーリー自体は(まだ)お気楽な話なのになあ。マンガの中でのことだが、やはり「どれだけの距離を移動したか」、は「どれだけの時間が経ったか」に直結している気がする。「こんな遠い所まで来てしまった」という感慨に、旅の興奮と、さびしさ、わびしさがオーバーラップする。久しぶりに良いマンガ体験が出来ました。続刊待つ!(次まで長そうだが)
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